イザラ書房
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・・・四季の祝祭、魂のかたわらに佇む者、音楽と色彩・・・

社名のIZARAはスペイン、バスク地方の言葉で「星雲」あるいは「銀河」を意味します。

イザラ書房の設立は 1969年に溯ります。

当初は、ブロッホ、アドルノなどのドイツ、フランクフルト学派の哲学書籍等の出版を行なっていました。

1980年代から、オーストリア出身の思想家、ルドルフ・シュタイナー(1861〜1925)が唱道した普遍人智学の翻訳出版を始め、

現在では、出版のほとんどが人智学=アントロポゾフィーに関係するものです。

今後もシュタイナーが訴えたかったテーマを暖かな魂のこもった形で皆様と共有できますことを望んでいます。



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■WSIF御殿場に参加して

2018年3−4月に開催された

‶社会イニシアチブ”世界フォーラム

そこに出席したイザラ書房前代表・澁澤比呂呼の
くりあんさブラジル通信CIRチルドレンズ・リソース・インターナショナル発行
への寄稿文です。

 

*************

 

WSIF御殿場に参加して

澁澤比呂呼(イザラ書房前代表)

 

<地上のわたしたちみんなにとって大事なお祭りが始まる>

 

参加のきっかけは新宿オイリュトミーハウスにあったWSIFのパンフレット。

笑顔の若い人たちがいっぱい写っていて、胸に聖フランチェスコのタウ十字が見えるウテ・クレーマーさんが活力に満ち行進の先頭に立っているもの。

21世紀の今を生きる地上のわたしたちみんなにとって大事なお祭りが始まるのね、と直感しました。でも自分はすでに五十代後半。近年まれなる貴重な集いだとしても、多分ここから感じ取れる若い勢いについて行けず、気圧されひとりぼっちで孤独をかこつことになるのではないか等々悩みました。普段非常に静かな内省の独身生活を送っているのでなおさらだったのです。

 

小貫大輔さんのモンチアズールでの活動を本で知ったのは20年ほど昔。今回の世界フォーラムは、小貫さんやそのお仲間、そして東海大学の学生たちがひとかたまりとなって準備し根気よく編み上げてきたものに思えましたが、とにかく普段接することのない若さと南半球からの熱い巨大なエネルギーによい意味で驚き尻込みしていた自分でした。でもまあ、そこのところの気持ちを察してくれたオイリュトミーハウスの友人に励まされて、御殿場に行くことにしたのです。

 

<エンパシーの完成形がすぐ隣に存在している>

 

富士山が巨きく見える会場の「交流の家」に着いたときには心弾み身体も弾むブラジリアンダンスや、とてもユニークに思える竹の幾何学オブジェが展開されていました。それらを早く見たくてそわそわしつつ、受付で頂いたプログラムを見てみますと、そこに書かれていた盛りだくさんの内容にまず驚き、何にどう参加していったらよいのかと実際目がくらんでしまいました。どうみても質の高いと思われる講演内容に、同時進行する様々に魅力的なワークショップ。できることならすべてじっくりと体験してみたい、と。そして次に驚いたのはボランティアの人たちの人員数・質ともに豊富なこと。挨拶をすれば返してくれるし、分からないこと困ったことには便宜を図ってくださり、礼儀正しい。当たり前のことなのですが、これは昨今なかなか難しいことになっているのではないでしょうか。

 

実は受付の方に繰り返し訊いても分からなかった自分の宿舎、地図を自分は正しく読み取れないためですが、ここも正反対の方向をどんどん行って行き止まりでUターンし、路で出会えたボランティアの方たちに連れて行ってもらいました。そしてここでもまた目がくらむような大人数での昼食。

その後はウテさん、ジョーン・スリーさん、小貫さんのお話を聞きに、まだ知らない人たちばかりの中に混じりいそいそと講演会場の講堂に向かいます。なんだか不安さ心細さが、楽しい気持ちに変わってきていました。

 

みなさん、ご家族や友人たちと三々五々連れ立ってあちこちの会場やお風呂に行かれるのですが、単独参加のわたしはそうも行かずいささか寂しいものがありました。もちろんそれは、しっかりとした主催者によって大きく保護された恵みの下にある、わたしのような立場のものが感じて当たり前の小さな寂しさなのですが。ところがそんなうっすら寒い心模様の中、隣り合わせのベッドとなった京田辺の父兄の方と、少し遠い所から来られた高校生にはずいぶんな慰めを頂いてしまいました。とくにお隣のお母様の笑顔がお日様の暖かさなのです。身体の芯からほっとするその存在のぬくもりに、どれほどわたしは心が温まったことでしょう。声のトーンも落ち着いて優しく、友情に満ちたもの。初対面なのにです。エンパシーの完成形がすぐ隣で存在しているこの奇跡にわたしは深い驚きを禁じ得ませんでした。

そして反対隣の女子高生は、なんともユニークな知性の持ち主なのです。通り一遍の挨拶は通用しません。よーく考えて、わたしという特異点からの個性的アプローチをしないと、ふふんと退けられてしまうのです。生意気といえるのかもしれませんが、誠実で謙虚なものの見方を持ってらっしゃる、とても親切なそして心優しい十代。短時間でも彼女と話す時間の楽しいことといったら。これも今回参加の大きなギフトでありましょう。

 

<感能力の高い日本人。南からの温風にぬくもってみな嬉しそう〜>

 

講堂に着くと、壇上にウテさんがいらっしゃる。ご高齢でもお元気で闊達だ。誕生日らしい、まあまあまあ、おめでとうございます、と内容は既に忘れてしまいましたが、お姿を拝見できた嬉しさに心の中で祝辞を独りごちていたことは覚えています。

次にジョーンさんによる充実した内容の、エンパシーの段階的発展プロセスの解説。禅で使われる十牛図の精神深化プロセスをイメージさせられます。最後は教育者としての小貫さんのコメントと、様々なお国がらで違う挨拶と感情表現の実例及びエクササイズ。そしてハグ。暖かくて無邪気なよき感情を挨拶として交わすということ、そのような安心で安全な感情が人として豊かであることの素晴らしさ。こんな風に心の温かさを通わせあって、人はやっと日々の生活を送っていけるのではないのかな等々思いながら、会場の時折爆発するような笑いの渦に包まれつつ聞くことが出来ました。隣の方たちとの挨拶の練習と軽いやりとりも実際に行ってみます。こんな楽しい、すてきな体験を私達に与えてくださった小貫さんに心から感謝します。

 

さて翌四月初日のニカノール・ペルラス氏の講演は圧巻でした。一歩間違うと救いようのないAIの発展と人類の未来についてのお話です。重いテーマですが、必ず救いはあるのだと、聞いておられたほぼ全員と共通の確信を持てたように感じます。自分としては、自然人として生まれ落ちた存在が、このSF的な21世紀においていかにして「人間になる」ことができるのか。いかに自律し、失望やエゴイズムを体験し、そして克服した深い人類的友愛で連帯していけるのかというテーマとなっています。また小グループに分かれての分かち合いは貴重なものでした。今の笑顔になる前に、救いのない困難な過去の日々を生き抜いてきた二十代。そして三十代……。この祝祭的なWSIFの場にいられることを、心からみな感謝し、喜んでているのだと感じ入りました。

 

<愛に基づいた自由な存在に向かう発展途上>

 

そしてまたもとの生活に戻る切なさもひしひし伝わってきます。しかしわたしは思います。祭りは終わらないのだ、と。つまらない日々の繰り返しなどというのもののほうが幻想なのだと。ウテさんのなされてきたことは、まさしく奇跡の連続だったのではないでしょうか。困難と涙と絶えざる失望や裏切りを伴っての、多様性に富んだインクルーシヴな喜びの日々だったと言えないでしょうか。確かな実例が南半球で起こっています。それを今回のWSIFで確認できたことはとてつもなく大きな恵みの体験でした。

 

このひんやりとした日本社会でわたしたちはもっと暖め合おうではありませんか、互いの心を。そして許し合おうではありませんか、互いの欠点を。アントロポゾフィーの観点で言いましてもまだ人間は完成した存在ではなく、愛に基づいた自由な存在へと向かう発展途上にあるのですから、さまざまな欠点、障がい、困難をさまざまな個別のスペクトラムで平等に抱えているという認識をわたしは持っています。

すべての人間が、もちろんすべての日本人が不完全な人間ですが、だからこそ、その認識の上で大地そのもの、植物の生命、動物の魂を優しい心をもって大切に扱わせていただこうではありませんか。そしてここに集ったようなこんなに素晴らしい若者たちを腐らせないこと、理不尽に苛立たせないこと、彼らを自死等の破壊行為に向かわせる鈍感さを即刻止めること。これはいかによく出来た人間でもひとりぼっちでは無理です。互いに支え合い励まし合う、そしてデジタルではなく直に挨拶できるコミュニティが必要なのではないでしょうか。

 

みなさん、どうされていらっしゃるのかしら。寂しくしていないかしら。最終日に見た、富士山の大きかった事。あの集いの広場で大勢と手をつないで、ぐるぐる踊るように歩いたっけ。あのときのハグは暖かかったな。あのときのはじけるような笑顔はいまどこでどうしている?

 

御殿場WSIFは巨大なエネルギーの塊の体験の記憶でした。ありがとう!!

           2018年11月 澁澤比呂呼(イザラ書房前代表)

posted by ・イザラ書房紹介 | 14:35 | ■エッセイ・お知らせ | comments(0) | trackbacks(0) |
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